穏やかに半月型になった唇。

白い手が、頬に触れる。

冷たい。



見透かした目が、攻撃的で自虐的な思想を誘う。

でもその指が、荒れる僕を戒める。



その白い肌は、別の色を受け入れない。

きっといつだって白いまま。

何色にも染まらないで、孤高なまでにそのままなのだ。

全てを受け入れているくせに、全てを跳ね返す。



まっさらな存在は、常に誰かを傷つける。

それとは逆に、その存在は傷ついたってまっさらだ。

何者にも侵されないというの。

そんな存在は、全てに染み渡っていくのに。



狂おしいほどの誰かの想いすら、笑って捨ててしまえる。

無垢で残酷。

それでも愛しい、清らかな君よ。



この想いにも、気付いているのは知っている。

応えてなど、くれないことにも。

その手を僕の頬から離したときに、僕らの別れが来るのだ。

その一瞬は、きっと永遠にも似た時間。



せめてその色を、僕の中に僅かに残したいから。


この穏やかな瞬間が終わる、その時に。


全ての終わりにその手をとって





噛み付くような、キスをした





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退廃的100の御題
084.終わり