いつも


い つ も



い  つ  も!!!!!!!!!!!!!!!!!!




とか怒っちゃうんだけどさ(あいつが悪いんだけどさ!)





あたしにあいつを気にしない時間ってないんだろうか?







      
                   ああ、何だかコンビニみたい!








「あー…っと、雛森さん…だよね?」
「………はぁ。」


友達とお弁当を食べ終わって片付けてたら、カッコイイ男の子に話し掛けられた。
顔は…見たことある。コタローの友達だ。
名前、なんていったっけな。


「コタローの友達だよ…ね?」
「覚えててくれたんだ。」


恐る恐るそう尋ねると、相手はものすごい爽やかに嬉しそうに笑った。

…わー、びっくり。

悩殺される人もいるでしょうよ、こんなけ爽やかだと。
ここまでくると、ちょいと爽やか過ぎてウサンクサイところとか少女漫画みたい。
何気なく視線を動かしたら友達が固まっていた。
顔を赤くして。


…犠牲者発見(ちーん


「何か用だった?」


何だか頭が痛くなってきたんだけど、そう聞いてみる。
とたんにコタローの友達1は困ったような顔をした(そんな顔まで可愛いでやんの!
その顔を見ていると、何となく不吉な予感。


何となく…?



訂正、ものすごく。



「コタロー…?」


不吉な予感の確証を改めて聞くとショック倍増なのをあたしは知っている。
ので!不本意ながらも自分から切り出したんだ。
疑問系で「?」はついてるものの、そんなものに意味はない。
だって確信してんだもん。ここまで来ると「諦め」だ。


コタローの友達1(名前思い出せない)は、こっくり頷いた。


そうだと思ったよ。
ああ、そうだと思ったさ。
そうじゃないわけがないと思ったさ!


「これからミーティングなんだけど、どこに行ったかわかんないし、電話かけても出ないしで…。雛森さん、心当たりないかなあって。」


本当に困った顔をしてそういう。
部活の試合は遅れないくせに、ミーティングとかそういうのに興味ないからな、あいつは。
はぁ…とあたしは溜息をついた。


「多分ね、今日はどっかで寝てる。」
「え?」
「今日あったかいでしょ。室内で寝るなら最適だよ。ダウンジャケット着てるから、布団代わりにもなるしね。学校にはいると思うけど。」



寝てるときに電話してもムダだとはわかっているけど、携帯を取り出して電話をかけた。
何回かコール音がなるけど、出る気配は全くない。
ああ、何であたしが自分の用事でもないのに探さなきゃなんないのよ、バカ。
友達1に「やっぱ出ない?」と聞かれて、あたしは(多分不機嫌そうに見えただろう)こっくり頷いた。


部室にはいなくて。
外?寒いから違う。
やっぱり中なんだろう。
中。第三講義室の椅子が好きとか言ってたけど。
あそこは窓ないし。
今日あったかいから日当たりのいいとこだ。
木曜日は人が多い。
無神経そうに見えて、人がいっぱいいるところ、特にお昼だからザワザワしてるところで寝るのちょっと嫌がるし。
2限は真面目にでてたから、ずっと寝てたわけじゃないし特にだよね。


この時間、日があたってあったかくって。
寝るには最適の場所っていったら…


一箇所しかないな。


「あー、オレやっぱもっかい心当たり探して…」
「見当はついたから、行ってくるよ。」
「え、次授業は?」
「これで終わりなの。あたし起こしてくる。コツがいるの、起こすのに。」


立ち上がったあたしを、ぽかんとした顔で友達1もあたしの友達も見てる。


「…何?」


いぶかしげに尋ねるあたしの顔を見て、二人は慌ててふるふると頭を振った。


何。
何その反応。
何ですか、なんかありますか。


「どっ…どこにいるってわかったの?」
「図書館の3階」
「「は?図書館?3階?」」


ちょっと、ユニゾンしてるよ、何でそんなハモってんの。
あんたら初対面じゃないのか。
気が合うんだろうか、もしかして。


「何でわかるの?」
「そうだよサク、なんで?」
「是非聞かないであげて」


お願いプリーズ。
何でわかったか説明したら、あたしとコタローとの深すぎる腐れ縁を改めて認識してしまう。
悲しくなるから言いたくなかった。人様には。


「部室に行かせればいいんだよね?」
「うん…え、オレもついていこうか?」
「いいよ、先に部室行って。ミーティング始まるとまずいでしょ?今起こしてますからって伝えてください。」
「ああ、うん。あの…ありがとう」
「いいえ」


苦笑い気味に笑うあたしに、また爽やかな笑顔で返す友達1。
あたしの友達に「ごめん、また明日ね」と言うと、爽やか笑顔に見とれてて、微妙にこっちに対して対応がぞんざいだった(やっぱり友より男なわけ…?


教室を出ると小走りで、校舎からさほど離れてない図書館へ向かう。
自動ドアをくぐって、エレベーターの3階へのボタンを押す。
3階に着くと、迷わず自習用の机のほう、明るい窓側の席に目を向けた。


一人だけ、座ってる…いや、寝てるヤツがいる。


染めてないのに色素の薄い、柔らかい茶色でふわふわの髪。
青いダウンジャケット。
しかも姿は見慣れすぎてて、服装を見なくてもわかってしまうのが悲しい。
近寄って顔を一応確認してみる。
マフラーを枕にして、あどけないとも言える顔(あたしは憎たらしいと思う)で眠っているのは、誰でもなくコタローだ。


「コタロー!」


髪を一房掴んでちょっと引っ張る。
大体いつもこれで起きるけど、ちょっと身じろぎした程度で起きない。

にゃろう…。

一箇所、どうしてもコタローが苦手な箇所をあたしは知っている(嬉しくなーイ!
髪から手を離して



耳へと手を伸ばして、ぎゅっとつまんだ。



「…っ!?あだだだだだだだだだだ!!!!!!!!!」


コントですか?と言いたくなるくらい良いリアクションをして起き上がるヤツは、涙目で耳を抑えながらキョロキョロと周りを見渡し、あたしの姿をやっと発見した。


「ひっどい!サク、ひっどい!」


目に涙ためて、何を乙女しくさってるんだ、この男は。


「文句言いたいのはこっちのほう!」
「なんでぇ?」
「携帯、見て」
「携帯?」


ダウンジャケットのポッケをごそごそして、赤い携帯を取り出す。


「あぁ!今日ミーティングかぁ、そういえば」
「アホか!」


気付け!電話に気付け!ポッケに入ってるのに、何で気付かないんだよバカバカ!
そう言いたいのを堪えて、あたしはゆっくり息を吐き出した。
怒る云々より先に、悲しくなってきたよ…。


「あんたの友達が来て、どこにいるか心当たりない?って聞かれたんだよ。すごい一生懸命探してたよ。早く行ってあげなよ」
「友達?誰?」
「知らないわよ、名前なんて!笑顔が爽やか過ぎて、ちょっとウサンクサク見える人」
「(ウサンクサイって…でもなんかわかった気がする)そっか…」
「友達だったら、その特徴でわかってあげなよ」
「(サク、オレそれちょっと無理だヨ!)」
「っていうか、早く行け」
「はっ…はぁい」


最終的に、段々目の据わってきたあたしに気付いたのか、コタローはいそいそと立ち上がって、ウン!と伸びをした。
相変わらず人懐こそうな大型犬の目をしたこの男は、のほほんと笑って、あたしのほうに目を向ける。
大体こういうときは、なんか言いたいときなんだ。


「何?」
「んー?なんでオレのいる場所わかったのかなぁと思ってさ」
「日当たりよくって、なるべく人に邪魔されないところ。そうすると図書館になるけど、3階は洋書と製本した論文のコーナーでしょ。特に人が来ない、寝るにはあったかい場所ってここしかないかなと思って。」
「お見通しだねえ」
「好きでなったわけじゃないわよ」


大体、コタローの友達にはこれで『あたしに聞けば何とかなる』とか刷り込まれたわよ。
これから起こしたりとか探したりとか、多分まわってくるんだ(経験者は語る
結局ほんとに年中無休のことを望む望まないに関わらず気にしなくちゃ…いけない…の?





ち  ょ  っ  と  や  め  て  あ  げ  て  !!!!!!!!





あたしはおかーさんじゃないのよ。ただの隣に住む幼なじみなのに。
コタロースコープと、コタロー専用目覚し時計みたいじゃないの。
あたしの自由はどうなるのよ。そんなもんないってか!?
何が悔しいって…自分もそれが当たり前になってることサ!(うわーん!




そんなあたしの心の叫びも知らず、コタローは隣でのんきにあくびをした。
しかも、ミーティング面倒だよとか言いやがりましたよ、この人!



…にゃろう。




「あだだだだだっっっっっっ!!!!!!!サク、耳はやめて!痛いっ痛いってば!」




痛いの知っててやってんのよ、ばか。





涙目になったコタローの横で、あたしはフンと鼻を鳴らしてやった(ザマミロ!