風が吹けば、まるで囁くように風が鳴る。
砂地は風紋となり、風の軌跡を残す。
体に纏っている防塵ケープがはためいた。
頭部が風に揺られ、ケープの合間から金色の髪が零れて揺れる。
黄砂の中では、ケープから出ている黒い軍服の足元。
その足元が似つかわしくない、などと考えてしまう。
この色のない砂の世界で、黒は酷く異質だ。
しばらくしてしまえば、この異質な色だって埋もれてしまうと言うのに。
我ながらおかしなことを考えている自覚はある。
顔を上げた。
視界に飛び込むのは、砂の海。
遥か彼方では、砂の海とくすんだ空が交わり合う。

何を求めるのだろう。
この広大な地が、疑問を促す。
胸に広がるのは虚無などではなく、純粋な疑問。
果てもない砂の世界で、己と言う存在の小ささを思い知る。
その小さな自分は、あの光り輝く人物の下、何を夢見て、何を求めるのだろう。
あの目が眩むほどの光を目の前にして。

未来は見えない、この砂漠のように
明日は辿り着けない、あの混ざり合う地平線のように
そして彼は目を突き刺す、あの太陽のように

己の前に存在していくのだろう


それは抗い難い、永遠と言う言葉と共に








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055:砂礫王国