ねえ、掴んでいた手の中のものはどこに消えてしまったのかな 確かにこの手の中にあったはずなのに ゆらゆら揺れて沈んでいく ただ誰にも見えないところまで 行かないでと手を伸ばすけれど、もう既に届かない場所 何がいけなかったのだろう わかっていたのに、わからなくなってしまう 当たり前にできていたはずなのに 酷く痛くて苦しくて もう呼吸の仕方さえ忘れてしまいそう 揺られる感覚と、浮遊する感覚にふと気付く 嗚呼、沈んでいくのは僕なのか それはまるで泳ぎ方を忘れた魚 滑り落ちていった手の中のもの 沈んでいく僕 ねえ、もう何もわからない どこにいってしまったの? ふと頭をもたげて見上げた先に、きらきらと光が差し込んでいる そう、もう届かない 遥 か 頭 上 に 水 面 は 煌 め く |
文字書きさんに100のお題 096:溺れる魚 |