最後に瞳に映ったのは、青い空だった
















            

















冷たくさめた引き金が引かれて、ドンと大きな音が鳴った。



何を失ったのだったか、何を求めていたのだったか。



そんなのはもう当の昔に忘れたかのように、何も考えなかった気がする。





どのみち、欲しいものなんてなかったんだ。





音が聞こえなくなって、時間だけがゆっくり流れて。



けれど実際、鉛の弾が体の中に食い込むのはきっと一瞬の出来事だったんだろう。





ぐらりと倒れるそのときに、相手の顔が泣きそうに歪められていたのを見た。



どうせ罪の意識なんてものをもつんだろ、おまえは。バカだ。



後々のこと考えたら、おまえが正しかったって、誰もが言うだろうよ。







それにオレはこうなりたかったんだ。








イカれてるって、自覚くらいしてるさ。





この世界に飽きたんだ。


生きるのも死ぬのも同じ。ただ、だらだらと生き延びていただけ。


自分で自分を殺すことすら、煩わしかっただけだ。




そんなヤツのために、おまえが罪の意識なんて持つなよ。

持たれたって、オレが困るんだ。

誰かの頭ん中にしつこく残るなんて、ガラじゃない。




そう言ってやりたいけど、無理だろうな。



オレが話すことはもうないだろう。






ああ、灼けるように日が明るい。

このまま全部燃やしてくれたらいいのに。

オレのカラダも、オレのいた証も。

この世界に、『オレ』なんて物を少しも残さずに。

忌まわしいこの世界から、オレの跡を全て消して。







視界の隅で葉が、赤い花びらがゆるゆると舞う。








赤い花。もう渡せない。



…あいつに花くらいは渡してやりたかった。





もう、叶わないけど。





多分自分の倒れる音も、オレは聴けない。





きっと倒れきったその時に、世界が終わる。









そして最後に見えたもの…――










オレが最後に見たのは、キモチワルイほどに澄み切った









ムカツクくらいに青い空、だった















長いお題1
「欠落した感情と過剰気味な理性」

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死ネタ。

生きることの感情が欠落中な男。
望むことは何もない