紫の花弁が降っている


まるでそれは、花の雨


噎せ返るような甘い香が、胸を絞める


そのまま降り積もって、何もかもを見えなくしてしまえばいい


土も、木も、家も


思い出も、想いも


過去も、今も、明日も、全部


ゆらゆらとしている


くるくると舞っている


さやさやと鳴いている


はらはらと落ちていく


花よ、


開いて 狂い咲いて 降って積もれ


散散と降る紫花よ、幾重にも重なれ


覆ってしまえ


隠してしまえ


あの馨りの下に埋めた想いを


あの蔦に絡ませた記憶を


私の瞳に もう映ることの無いように



もう、思い出さないように




深く 深く 深く





私の心が もう 啼くことの無いように








―― だってもう、帰れない









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どんなに愛しくても戻れないなら
全て埋めて、目に見えないところに