燃える紅
僕らは笑っていたけど、空は泣いていた。
僕らの代わりに泣いていた。
焼け付くような、紅い色をして。
引きずり出された夜が、ゆるゆると空を浸していく。
穏かな時を 穏やかに蝕んで それは確実に近づいてくるのだ。
僕らの時間を、奪いながら。辿りながら。導きながら。
このままなんて、有り得ないと、僕らは知りすぎるくらい知っている。
時はどうやっても、止めることができないのだと。
だからこそ愛しくて。
だからこそ許せない。
風でバタバタと揺れている服の裾。
僕らと一緒で、足掻くみたいに揺れている。
愛しいものは、徐々に変質し、思いもかけず指先から零れていくものなのだ。
『人間』には、否『生物』は、それを止める術を持たない。
わかっていてもどうしようもなくて
ただ、僕らは心内で繋いだその手を――離せないままだ。
肌に焼きついた紅い色は
瞳に焼きついた紅い色は
頭に焼きついた紅い色は
僕らの中で燃えながら、いつか僕らを泣かすだろう。
|