サブリミナル



 全て捨てたと思っていたのに。

 どうしてここに、あの人の存在を裏付けるものがあるのだろうか。

 まざまざと蘇るのは、そのときの酷いくらいに鮮やかな心。

 嗚呼、どうしてこんなに胸が痛いのだ。 



 刷り込むように、いとおしいと思っていた。

 ただ、その言葉と痛みだけ、体に刻んでしまったから。

 指先が、震えている。

 血が逆流するような、情念。

 未だに体が覚えている。



 きっと、植え付けてしまっただけ。

 潜在意識に、植え付けてしまっただけだ。



 繰り返し、繰り返し、早さも音量も秒刻み。

 繰り返し、繰り返し、その刺激は与え続けられた。



 崇高だと思い込んだ、美しいと思い込んだ、その気持ちを。



 それでも多分、愛していた。

 それがきっと、真実だった。



 繰り返し、繰り返し、焼き付けた刹那の時を。

 繰り返し、繰り返し、体中を壊すような高鳴りを。



 繰り返し、繰り返し



 それほどまでに、いとおしかったのは



 疑いようも無い、あなたの存在。