静かな部屋に、黄金色の光が充満していて。
 何だか、たった二人、その中に溶けてしまいそうだと思ったのだ。
 同意を求めようと、もう一人のほうを振り返りながら声を出そうと――した。

「あ…の…」

 かけようとした言葉は、掠れて声にすらならなかった。
 暮れていく窓の外。
 それをただ静かに見つめる顔は、呼びかけなければ、こちらを向くことはナイと。
 知っているのに。
 その横顔が、誰かを想っていることが判りすぎて。
 声なんて、出せなかった。

 誰を想っているんだろう。
 誰を待っているんだろう。

 悲しげなのにまなざしはとても優しく、視線はひどく愛おしいものを見えないその先に捉えている目で。

 散り行けばいいのに、この気持ちは鮮やかに芽吹いたまま。
 挑むことすら許されない、彼女の胸に根付いた、大輪の花。
 見ていると、いうのに。わかりきっている、のに。
 叶わない、届かない、思いだと。
 一秒ごとに、心の刻み込まれていくのに。
 行き場のない恋は、たゆたうだけ。

 だけど

 それでもそれはやっぱり、あなたへの、恋で。

 散らせない。だけど咲かせられない。
 あなたはきっと知らない。知らせられない。
 この気持ちは、密やかな、狂おしさ。
 横顔が、とてもきれいで。
 締め付けられる。
 心の奥が、痺れて、痛い。

 金色が溢れる、二人きりの部屋。
 できるなら。できるなら。

 この部屋の中、二人、溶けてしまえたらいいのに。